2022年は、5本の映画と8本のドラマで活躍を見せた青木柚。10代の頃は鬱屈した思春期の少年を演じさせたら右に出る者なしだったが、最近では、明るいキャラクターにもフィット。どんな役柄にも血を通わせ、魅力的な人物として演じきる。21歳の演技派として、映画、ドラマ、配信作品などで引っ張りだこになっている。
その名を全国に知らしめたのは、今年3月から登場したNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』だ。初代の安子(上白石萌音)、二代目のるい(深津絵里)、三代目・ひなた(川栄李奈)と3人のヒロインを描いた異色の朝ドラだが、青木はひなたの歳の離れた弟・大月桃太郎役で出演。ひなたの親友に恋をする少し“おませ”な高校球児にふんし、「微笑ましい」「可愛すぎる」と評判になった。
『カムカムエヴリバディ』と同時期の3月に配信されたのが、YOASOBIの『あの夢をなぞって』の原作小説を映像化した短編『夢の雫と星の花』(smash.にて配信)だ。青木は予知夢で女子高生と繋がる見習い神主の一宮亮を演じ、上白石萌歌と共演した。
8月には、映画『恋する寄生虫』の柿本ケンサク監督による全8話の『ワンナイト・モーニング』(WOWOW)に起用され、客に挨拶をしない無愛想なコンビニ店員・重松純にふんした。注目は、筧美和子とダブル主演した最終話『肉まん』。その胸中を語るクライマックスで、視聴者の心を震わす演技を見せた。
2022年秋は民放の地上波初レギュラー、主演映画も
2022年9月には、2本の映画と2本の配信ドラマが公開。映画『グッバイ・クルエル・ワールド』(ハピネットファントム・スタジオ)では三浦友和演じる強盗団のボス・浜田の手下の少年役を演じ、『よだかの片想い』(ラビットハウス)では主人公(松井玲奈)を慕う大学院の後輩・原田役を好演した。
配信ドラマは、燃え殻のエッセイを阿部寛主演で映像化した『すべて忘れてしまうから』(Disney+)に出演。舞台となるバー「灯台」に“ある目的”を抱いて通う青年・泉を演じた。また、絵津鼓のマンガを実写化した『モアザンワーズ/More Than Words』(Amazon Prime Video)では、幼名馴染みの女性と年上の男性の間で揺れ動く、妹尾槙雄を繊細に演じ、藤野涼子、中川大輔と共演した。
10月から顔を見せたのは、お笑い養成所を舞台としたドラマ『最初はパー』(テレ朝系)。アイドル芸人を目指す青い髪の青年・木島大和にふんして民放地上波初レギュラーを飾った。どちらかといえば “陰”の憂いを帯びたキャラクターが多かった青木だけに、派手なルックスの陽気なキャラが新鮮だった。
そして11月25日から公開されたのが、主演映画『はだかのゆめ』(boid/VOICE OF GHOST)だ。監督は、青山真治監督が「最後の映画作家」と称した新星・甫木元空。青木は、余命わずかな母親に寄り添う息子・ノロを演じて、甫木元監督の独特の映像世界と四万十川の風景に溶け込んでみせた。本作は今年の東京国際映画祭「Nippon Cinema Now」部門に選出された。
10代から松居大悟、塚原あゆ子ら鬼才からの起用が相次ぐ
青木は、中学生のときに足立伸監督の『14の夜』(16年/SPOTTED PRODUCTIONS)のオーディションを受け、メインの中学生の1人に選ばれた。以降、松居大悟監督の『アイスと雨音』(18年/SPOTTED PRODUCTIONS)、冨永昌敬監督の『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年/東京テアトル)、塚原あゆ子監督の『コーヒーが冷めないうちに』(18年/東宝)など気鋭の監督の映画に出演。
2020年は、『死にたい夜にかぎって』(MBS・TBS)や『あの娘の夢を見たんです』(TX)といったドラマや、映画『サクリファイス』(Récolte&Co.)などに出演した。
『うみべの女の子』で新人賞ノミネート。ジョニー・デップと共演も
8本のドラマと7本の映画に出演(短編2本含む)し、その存在感が際だったのが2021年だ。ドラマは『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレ東系)、『プロミス・シンデレラ』(TBS系)などに出演。劇作家・演出家の加藤拓也が脚本・演出を手掛けた『きれいのくに』(NHK)では、高校生篇に主演した。映画『スパゲティコード・ラブ』(ハピネットファントム・スタジオ)では、自殺願望を語る同級生に片想いをする高校生・赤羽圭役で群像劇のメインの1人を担った。
さらに同年、鮮烈な印象を残したのは、石川瑠華とダブル主演した『うみべの女の子』(スタイルジャム)だ。同級生と秘密の肉体関係を続ける中学生・磯辺恵介を体当たりで演じ、「毎日映画コンクール スポニチグランプリ」の新人賞にノミネートされた。さらにハリウッド映画『MINAMATA—ミナマタ—』(ロングライド、アルバトロス・フィルム)では重度の水俣病患者・シゲルにふんし、ジョニー・デップと共演を果たした。
2022年にタレントパワー急上昇。イメージ1位は「落ち着いた」
青木のタレントパワーの推移を見ると、2021年11月に4.2%だった認知度が、2022年8月に6.6%に急伸している。「見たい、知りたい」の指標である誘引率は、2022年2月に最高の92.7%をマーク。これは2021年の出演ラッシュと『カムカムエヴリバディ』への出演発表効果が大きそうだ。認知度に誘引率を掛け合わせたパワースコアは、2021年11月の2.0から右肩上がりで上昇し、2022年8月には最高の3.8を記録。今年の活躍が、スコアを押し上げていることが分かる。
青木は、どのようなイメージを持たれているのか。イメージワード調査の結果を見ると、「落ち着いた」が41.3%でダントツの1位。2位は30.4%で「さっぱりとした」、3位は28.3%で「優しい」となっている。以下、「誠実な」「演技力がある」「センスが良い」「クールな感じ」と続く。「落ち着いた」「クールな感じ」などは “陰”のイメージを想起させるが、今後、『最初はパー』のような“陽”のキャラクターが増えることで変化しそうだ。
12月16日に公開され、今年を締めくくる映画となるのは、『終末の探偵』(マグネタイズ)。北村有起哉演じる探偵と関わるボランティアの青年・佐藤翔にふんする。2023年は、『まなみ100%』『神回』ほか主演映画が公開予定だ。幅広い役柄に命を吹き込む青木の、新たな顔に期待したい。
青木柚(あおき・ゆず)
誕生日 2001年2月4日
出身地 神奈川県
所属事務所 ユマニテ
公式サイト http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=42
公式インスタグラム https://www.instagram.com/yuzu_aoki_/?hl=ja