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紅白歌合戦に7回出場の山内惠介、意外にも一番人気は30代男性

『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』

話題のアーティストのセールス状況や新作の内容、タレントパワーランキングを見ながら、そのヒット傾向を読み解く『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』。第105回目は、演歌歌手・山内惠介に注目。

長い下積み期間中に安定の歌声とファンへの神対応で人気上昇

山内惠介は1983年福岡県生まれで、幼少の頃から演歌に親しみ、高校生の時に出場したカラオケ大会で作曲家・水森英夫にスカウトされレッスンを経て、2001年4月、“ぼくはエンカな高校生”というキャッチフレーズでシングル「霧情」にてCDデビュー。その前年にデビューした同じ福岡県出身&水森英夫門下生の氷川きよしが1stシングル「箱根八里の半次郎」の大ヒットでいきなり紅白歌合戦に出場を決めたのに対し、山内は2005年頃までTOP100圏外が続いた。

しかし、2006年に酒場のママの気持ちを歌った「船酒場」で初のTOP100入り、2008年の♪掘れたね ほの字だね ホッホー~という軽快な歌詞で今でもLIVEの定番曲「恋する街角」で初のTOP50入りと徐々にセールスを伸ばす。

この頃には、安定感のある歌声と、LIVE即売会での丁寧で人間味のあるファンとの交流が評判になるように。北川大介、竹島宏とのユニット“イケメン3”の三男坊として、NHK『歌謡コンサート』(当時)にもたびたび主演したことも人気に拍車をかけた。

山内惠介 過去10年間のシングル売上と各作品の作詞家(作曲はすべて水森英夫)

2014年に初のオリコンTOP10入り、2015年から紅白歌合戦に連続出場中

続く2009年の「風連湖」が1年以上TOP200内に滞在するロングヒットとなり、「白樺の誓い」「冬枯れのヴィオラ」と寒空を想起させる悲恋ソングで人気が定着。2014年の「恋の手本」では初のオリコンTOP10入りし、以降2022年まで9作連続入りを果たし、2015年には念願の紅白歌合戦初出場を決めた。

この間に、時に切なく、時に力強く歌うメリハリのあるボーカル、松井五郎や松尾潔などJ-POPでも実績の多い作家の起用(しかも、それも自然に自分流に歌いこなせる)、さらに何回も即売会に並びたいというファンに応えたCDの発売形態の多様化が進み、2018年の「さらせ冬の嵐」は累計10万枚を突破。2020年以降は、コロナ禍でコンサートやインストアイベントがそれ以前ほど活発にできない中でも、累計5万枚以上をキープしている。

山内惠介 シングル「誰に愛されても」 ジャケット画像 (左上から赤盤、青盤、橙盤、唄盤)

新曲「誰に愛されても」は、作詞:売野雅勇による力強い逆境歌謡

2022年の最新作「誰に愛されても」は、チェッカーズや中森明菜、荻野目洋子、河合奈保子などのヒット作を多数手がけた売野雅勇による作詞。「運命に引き裂かれて時代に虐げられ」ても「まごころはあなたのもの」と、逆境の中でも愛し続けるという強さを見せる歌謡バラード。これまで以上に力強い歌唱がポイントなので、よりファン層を広げられるか期待したい。

実は30代男性にとても人気、女性では同年代から母親世代以上まで

そんな山内のタレントパワーのスコアを見てみると、意外なことに女性よりも男性の方が若干高い。2021年11月は紅白歌合戦の出場をかけたプロモーション強化期間だが、2021年5月(さらに2020年~2019年)も、やはり男性が若干高いか男女同程度。ライブからは熱烈な女性ファンの歓声が目立っているが、彼を「知っている×見てみたい・聴いてみたい」人は、男女ともに案外多いのだ。

しかも、その年代別を見ると、女性では彼と同年代と親世代の50代後半から60代が多い(調査されていないがライブの様子から70代以上にも人気)のに対し、男性では彼と同じ30代が特に高い。

確かに、あれだけ女性ファンが多いのに嫌味がなく、番組のMCでも軽快なジョークを飛ばしつつ決して出過ぎた発言もない。様々な面でジャンルレスに活躍する氷川きよしの影に隠れがちだが、山内もまた地道にファンを開拓しているのだ。

カバーアルバム『Roots』では、これまで以上に幅広い楽曲に挑戦

そんな彼が2021年9月にリリースしたカバーアルバム『Roots』も是非初心者におススメ。本作は、文字通りルーツとなったカバー集だが、「みだれ髪」(美空ひばり)や「女のためいき」(森進一)といった定番演歌から、「僕が僕であるために」(尾崎豊)、「世界中の誰よりきっと」(中山美穂&WANDS)などのJ-POPまで男性曲も女性曲も幅広くカバー。

特に、オリジナルの米倉利紀がコーラスで参加した「Love in the sky」は、本当にこういう明るいポップスが好きだと分かるし、本作の新曲「あなたを愛で奪いたい」(作詞:売野雅勇、作曲:織田哲郎)でも、90年代のヒット曲を多数聴きこみつつも、自分の色が出ていて興味深い。2022年2月発売のLIVE CDやDVD『コンサートツアー2021』は、これらのカバー曲(+大滝詠一「幸せな結末」、浜田省吾「もうひとつの土曜日」も!)や過去のヒット曲をまとめて味わえるので、まずはサブスクや公式動画サイトで楽しんでみてはどうだろうか。

山内惠介 アルバム『Roots』ジャケット画像

 

 

 

 

著者プロフィール

うすい・たかし。1968年京都府出身。特技は1975年以降のバースデーソング占い(笑)。地元大学大学院理学研究科修了、専攻は理論化学(だったはず)。総合化学会社、音楽系広告代理店での数値解析やマーケティング実務を経て、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、音楽分析や配信サイトの選曲、コンピレーションや復刻CDの企画のほか、日経エンタテインメント!やfumufumu news、共同通信加盟社の各地方の新聞等で愛と情熱に満ちたコラムを執筆。Twitterは @t2umusic(よかったらフォローして下さい♪)

コミュニティFM「渋谷のラジオ」にて水曜12時から『渋谷のザ・ベストテン』というベテラン・アーティスト中心の音楽番組を生放送でお送りしています。専用アプリから全国で生放送が聴けますし、過去のトーク部分は番組の(『渋谷のザ・ベストテン』note)から聴くことができます。よろしければ♪また、このうちプレイリスト #おとラボの説明をSpotify ポッドキャストにて実施中。こちらも好評(?)です! https://open.spotify.com/show/4X6lAll8A0QO2UKqucuMyx

☆各種ストリーミングサービスにて大人向けのプレイリスト『おとラボ』を選曲しています♪

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☆卒業タイムトラベル~旅立ちと別れの春へ
☆決定版 デュエット&コラボ
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