男性タレント

成長目覚ましいBE:FIRST、デビュー半年内で幅広い年代の女性に人気

『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』

話題のアーティストのセールス状況や新作の内容、タレントパワーランキングを見ながら、そのヒット傾向を読み解く『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』。第107回は、男性7人組、BE:FIRST(ビーファースト)に注目。

SKY-HI自身の判断で選ばれた純粋にスキルの高い7人

BE:FIRSTは、オーディション『THE FIRST』から発掘されたSOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEOによる男性7人組。本オーディションは大きな話題となって様々なメディアで報じられているので、詳しい説明はここでは割愛するが、その大きな特徴は次の2つだと筆者は感じている。

まず一つは、テレビ番組連動型であること。日本テレビ系の情報番組『スッキリ』および同テレビ局系列が日本事業を展開するサブスク型ビデオ・オン・デマンドのHuluにて、約4か月間にわたってドキュメンタリー形式で追跡されていた。これ自体は、2000年前後の『ASAYAN』など決して珍しくはないが、もう一つの大きな特徴は、アーティストSKY-HIが自腹で1億円を投じて、自身の判断でメンバーを決めるということ。これにより、ダンサーや高速ラッパーとしても有能であるSKY-HIについていこうという、通常のヒップホップ界隈とは異なる才能が集まるし、また視聴者参加型にしないことで、純粋にダンスや歌・ラップが好きで、なおかつグループとなった時に化学反応を起こしそうなメンバーが、TVスター性よりも重視して選ばれたように感じた。

”クリエイティブファースト”なグループらしく、全方位型のヒットを連発

その後、2021年8月と10月にそれぞれデビュー前の配信シングル「Shining One」「Kick Start」をリリースし、いずれもダウンロードにて週間1位を獲得。そして、11月3日満を持してシングル「Gifted.」をリリースし、CD2位(初動約21万枚)、ダウンロード1位、ストリーミング1位、ラジオ1位、Music Video1位というバランスの良さで総合ソングチャートでも見事1位となった。このように彼らの大きな強みは、通常のボーイズグループがCDに突出しダウンロードやラジオが控え目になるところ、ほぼ全方位で上位となることだろう。「Gifted.」はデビュー曲によくある華々しい感じではなく、静寂の中で燃えたぎる情熱を歌ったようなミディアム調の楽曲。こうした楽曲を選んだのも、SKY-HIの決して守りに入らないという戦略がうかがえる。

別れをテーマにしつつ前向きな「Bye-Good-Bye」もビルボード総合2位に

2022年に入っても、1月に「Brave Generation」、3月に「Bye-Good-Bye」、4月に「Betrayal Game」をリリースし、いずれもダウンロードにて1位を獲得。特に、「Bye-Good-Bye」は、ストリーミング、ダウンロード、ラジオ、Twitter、Music Videoの5部門が1位となり、CD発売前にしてビルボード総合で1位となった。本作は、別れをテーマにしつつも、前に進んでいこうという気持ちの漲った春から初夏にピッタリの明るいアップテンポのナンバー。7人の歌のリレーションもダンスのしなやかさも、前年に比べて随分と上達していて驚かされた。

そうして、5月18日にこれら3曲を収録した2ndシングルCD「Bye-Good-Bye」をリリース。AKB48「元カレです」、米津玄師「M八七」との同日に競合が並ぶ中で、CD3位(約16万枚)、ストリーミング3位、ダウンロード3位、Music Video2位で、ビルボード総合2位となった。もし、発売週が異なっていたらほぼ1位か僅差で2位となるほどの高得点の2位ゆえ、2作連続の大ヒットと言ってよいだろう。今後は、唯一、上位入りしていないカラオケ部門に、他のブレイク組のように攻め入ることができるかにも注目したい。近年は、Official髭男dismやYOASOBIの超難曲でもカラオケ上位入りするのだから、一人ではとても歌えそうにないほどめくるめく展開の彼らの曲にもカラオケ人気を期待している。

BE:FIRST パワースコア(2022年2月)

新人ながら幅広い女性ファンが支持!だからこそ大切にしたいSNSでのファン交流

そんな彼らのパワースコアを見てみると、2022年2月調査では、全体で6.6ポイントとなった。これはシングルやアルバムTOP5級の常連アーティストによくある人気状況なので、CD1作時点の数字としては順調な人気と言えるだろう。さらに、男女別×年代別でも見てみると、男性全体では4.6ポイントで、これは、女性人気に偏りがちなボーイズグループの中では好調な方だ。また、男性×年代別で見てみると、10代・20代で人気が出始めていることも分かる。

さらに驚くのは女性人気だ。女性全体では8.7ポイントだが、これを年代別で見ると、10代前半と60代が同じ12ポイント台、他に30代や50代でも10ポイント超で、総じてどの年代の女性にも人気。これは、全国区でターゲットの広いテレビの影響力が強く、なおかつ全年代に訴求しうる人懐っこいキャラクターや、厳しい大人の女性の目にも耐えうる高いスキルゆえの高い数字とも言えるだろう。

しかし、人気が分散しているということは、言い換えれば、他のブレイク組のように「ある年代」「ある地域」にファンが集まっていないということだ。もしかして、BESTY(彼らのファンの愛称)の人たちの中にも、“あんなに大人気なのに、なぜ自分の周りにはファンが少ないのだろう”と感じている人も多いかもしれない。それゆえ、ファン同士やアーティストとファンの間のSNS上のコミュニケーションがより大きな心の支えとなるだろう。だからこそ、他のアーティスト以上にBESTYの方々には前向きなやりとりや、年代の異なる人どうしの思いやりがネックとなるはずだ。メンバー7人が互いに高め合いつつも仲の良さが各メディアから伝わってくるように、ファンダムでもそういった雰囲気が今後も継続していくことが、彼らの更なるブレイクのカギになりそうな気がする。

BE:FIRST Bye-Good-Bye(初回生産限定盤) CDジャケット

 

 

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著者プロフィール

うすい・たかし。1968年京都府出身。特技は1975年以降のバースデーソング占い(笑)。地元大学大学院理学研究科修了、専攻は理論化学(だったはず)。総合化学会社、音楽系広告代理店での数値解析やマーケティング実務を経て、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、音楽分析や配信サイトの選曲、コンピレーションや復刻CDの企画のほか、日経エンタテインメント!やfumufumu news、共同通信加盟社の各地方の新聞等で愛と情熱に満ちたコラムを執筆。Twitterは @t2umusic(よかったらフォローして下さい♪)

コミュニティFM「渋谷のラジオ」にて水曜12時から『渋谷のザ・ベストテン』というベテラン・アーティスト中心の音楽番組を生放送でお送りしています。専用アプリから全国で生放送が聴けますし、過去のトーク部分は番組の(『渋谷のザ・ベストテン』note)から聴くことができます。よろしければ♪また、このうちプレイリスト #おとラボの説明をSpotify ポッドキャストにて実施中。こちらも好評(?)です!
☆各種ストリーミングサービスにて大人向けのプレイリスト『おとラボ』を選曲しています♪

これまでのまとめはコチラ

☆BE:FIRST「Kick Start」選曲で話題! 決定版!サイクリングBGM~風と自転車と青春と 
☆海外の人気作を網羅! 海外発!日本のシティポップ&アニソン人気曲 
☆懐かしのヒット曲満載! ヒット曲厳選!1976-2000一番聴いた歌