2019年の映画『小さな恋のうた』で俳優デビュー。ドラマ『ノーサイド・ゲーム』や『私の家政夫ナギサさん』(ともにTBS系)などで活躍してきた眞栄田郷敦。
新作は、1998年の長野オリンピックの知られざる実話を、飯塚健監督(『ステップ』)が映画化した『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』。ケガでトラウマを抱えたテストジャンパー・南川崇役に挑んだ。
※テストジャンパーとは、競技の前にジャンプ台の安全を確かめたり、何度も飛んで滑走路を固めたりする仕事。
涙が出るほど感動した台本
——『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』のオファーをどう受け取りましたか?
スキージャンプ自体は知っていたんですが、長野オリンピックで日本が金メダルを取ったことやその舞台裏の話は知らなかったんです。だから「こんなことが実際にあったんだ」「裏方まで命がけなんだ!」って、衝撃を受けました。
台本を読むだけでも胸が熱くなって、涙が出そうになるほどでしたね。
——南川崇という役については、どう思われましたか。
オリンピックで戦えるほどの実力を持った選手。でもトラウマのせいで、自分を大きく見せてしまうという弱さを持ったキャラクターで最初はちょっと嫌な人間に見えるんだけど、実は違う。そのグラデーションを意識しながら演じようと思いました。
——役作りは、どういうことを?
スキージャンパーの方は見た目が細いので、まずは体を絞りました。体重で言うと、65㎏にしたかな? ……その前の体重が、どのくらいだったか忘れちゃったんですけど(笑)。あとはスキーの練習をして、飛び立つ前のジャンプの練習。ジャンパーたちが実際にやっている「空(カラ)サッツ」という練習をしましたね。
——空(カラ)サッツとは?
向き合った2人の1人がジャンプの体勢から飛んで、もう1人がそれを上に持ち上げる。意外と難しくて、ジャンパー役のみんなでかなり練習しました。
田中圭や山田裕貴からの刺激
——20年1月からの撮影は、いかがでしたか。
東京近郊で2週間くらい撮って、4週間くらい、実際に長野オリンピックが開催された白馬に泊まり込んでの撮影でした。白馬は時間の流れがゆっくりで、撮影も夜はあまりなかったので、スケジュールはゆったり。
田中圭さん、古田新太さん、山田裕貴さんと、たくさんの経験を積まれている先輩方にいろんなお話を聞けて、お芝居を近くで見られて、勉強になりましたね。
——刺激を受けたりも?
それはもう。みなさんのお芝居を間近で見てると……ちょっと悩みますね。
——悩む?
自分はまだまだだなって。もっとがんばらないとって気持ちになりました。
——田中圭さんは、どんな座長でしたか?
圭さんは、お父さんみたいな(笑)。安心感があるんですよね、圭さんがいると。スキージャンパー役の全員をご飯に連れていってくださったりもして、「みんなで楽しくやろうぜ!」っていう感じ。良い雰囲気を作ってくださいました。
——撮影で大変だったことは、どんなことがありますか。
ジャンプスーツや靴に慣れること。身につけているだけで体力を奪われるし、動きづらいんですよ。スキージャンパーとして不自然にならないように、できるだけ触るようにしてました。
——完成した映画をご覧になっての感想は?
台本以上に熱かったです。また最後のMISIAさんの主題歌がぴったりで。僕のようにこの実話を知らない人たちに、ぜひ知ってもらえたらうれしいです。
やるからには、徹底的にやりたい
——テストジャンパーは裏方の仕事。眞栄田さんは「表方」ですが、共感できましたか?
僕はもともと、表より裏が好きなんです。だから、気持ちは分かりましたね。例えば、僕は高校時代に吹奏楽部だったんですけど、舞台の組み立てから照明まで、全部自分たちでやってたんです。
この世界に入ると、そういうお膳立てを全部していただいて、自分は芝居をするだけという状態になってる。そのありがたさを、この映画を通して改めて実感したというか。みなさんに感謝しないといけないなって思いました。
——『小さな恋のうた』では半年かけてギターを修得、『ノーサイド・ゲーム』では15㎏増量したとのこと。徹底した役作りは、どなたの影響ですか?
どうなんですかね……。でも海外の役者さんは、当たり前のようにそういうことをするので、やらない理由がない。やるからには徹底してやりたいっていう感じです。
眞栄田郷敦(まえだ・ごうどん)
誕生日 2000年1月9日
出身 アメリカ・ロサンゼルス
所属事務所:G&F
公式サイト:https://maeda-gordon.com/
映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』
2021年6月18日から全国公開
監督:飯塚健
出演:田中圭、土屋太鳳、山田裕貴、眞栄田郷敦、小坂菜緒(日向坂46)、落合モトキ、菅原大吉、八十田勇一、濱津隆之、古田新太
配給:東宝
(C)2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会