『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』
話題のアーティストのセールス状況や新作の内容、タレントパワーランキングを見ながら、そのヒット傾向を読み解く『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』。第108回は、女性シンガーソングライターのUruに注目。
デビュー前にして動画サイトが人気、しかも主役は「歌声」
Uruは、デビュー前の2013年に、自身のYouTubeチャンネルを公開し、オリジナル楽曲のほか、様々なジャンルのカバー楽曲をアップすることで、2016年のデビュー前にしてチャンネル登録数が15万人近くとなる実力を持っていた。しかも、他のYouTuberが、ダンス動画やおしゃべり、はたまた食レポやゲーム実況など音楽以外の要素でファンを広げていく中で、彼女の場合はあくまでも「歌声」が主役のシンプルな動画。そのことが、彼女の魅力をより引き出すこととなったとも言えるだろう。
そうして2016年シングル「星の中の君」でデビュー。デビュー後も、本名、生年月日、出身地など公表せずしばらくはテレビ番組での歌唱もなく、2017年のアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』主題歌となった「フリージア」やTBSドラマ『コウノドリ』主題歌となった「奇蹟」での儚げなボーカルで少しずつ浸透していった(ともに1年半から2年かけてダウンロード10万件突破)。
ドラマにふさわしいドラマティックな歌声で、2ndアルバムがロングヒット
さらに、2018年末のTBS系ドラマ『中学聖日記』主題歌の「プロローグ」と、2020年初のTBS系日曜劇場『テセウスの船』主題歌の「あなたがいることで」の2作を担当。ともに、悲しさも愛しさも深い話題のドラマだが、Uruは、繊細ながら凛とした姿勢で愛を貫くという、まるでドラマそのものを体現したような歌声で多くの共感を呼び、「プロローグ」は50万ダウンロード&ストリーミング5千万回再生、「あなたがいることで」は25万ダウンロード&ストリーミング1億回再生を突破。
さらにこれらを収録した2ndアルバム『オリオンブルー』は、オリコン最高4位、累計売上は2年をかけて約10万枚というロングセラーに。この時期からテレビの音楽番組にも出演したことも奏功し、ここでファンが大きく広がっている。
2022年のシングル「それを愛と呼ぶなら」では、Uruワールドがより深遠に
その後、3作のシングルを経て、2022年6月に通算12作目となるシングル「それを愛と呼ぶなら」をリリース。本作は、二宮和也、多部未華子が夫婦役で出演し、誘拐事件を機に家族の絆を取り戻していくという内容のTBS系日曜劇場『マイファミリー』主題歌。Uruが詞曲を手がけ、ボロボロになりながらも、そこから立ち上がろうという想いを、無理に励ますのではなく、優しく包むようにたおやかに歌っているのが印象的。編曲は、20年の「あなたがいることで」に続き、小林武史が担当し、その想いの気高さを演出している。本作のセールスの方は配信1か月ほどで、まもなく8万ダウンロード、ストリーミング3千万回再生と、着実にヒット中だ。
カップリングには、愛しい想いが届けららず溢れるばかりのラブ・バラード「セレナーデ」と、マカロニえんぴつのストリーミング大ヒット曲「なんでもないよ、」のカバーを収録。特に後者は、Uruが歌うことで、はっとりの歌詞世界が複雑なようで実はとても人間的なことがより明確になる。
さらに、初回盤のブルーレイには、前シングル「Love Song」、本シングル「それを愛と呼ぶなら」の各Music Videoと、2021年に東京国際フォーラムで行われた『Uru Live 2021「To You」』のダイジェストを収録。Music Videoはドラマ仕立てでホロリとさせるし、LIVE映像の方は、新旧男女問わず幅広いカバーのレパートリーに驚かされるし、アップテンポの楽曲もスリリングに聴かせるし、シングル表題曲だけでは分からない魅力満載。しかも、ギターとピアノ、コーラスとUru本人だけであの大ホールをダイナミックな世界に変えているのも驚かされる。
タレントパワーでは、幅広い年代の女性から高い支持!
そんな彼女のタレントパワーを見ると、全体は11.7ポイントと、デビュー5,6年目ではかなり順調なスコア。特に、女性では16.4ポイントと、ヒットチャート1,2位常連アーティストの多い20ポイント級に迫っている。これを男女各年代別で見てみると、男性は突出した人気ではないものの幅広い年代に顔と名前は意外に知られているようだ。これに対し、女性では10代や20代前半で20ポイント超え、さらに40代や50代でも20ポイント前後が見られ、ストリーミングメインの若い世代からダウンロードやパッケージメインの中高年層まで高く支持されていることが分かる。やはり、カラオケで歌いたくなるドラマ性のある歌声に若い世代がより惹かれ、ドラマや映画に自然と寄り添う歌声に幅広い年代の女性が共感するということだろうか。
2022年7月末から10月には、全国ホールツアー『Uru Tour 2022「again」』が予定されている。コロナ禍や海外の戦争など、心休まらない日々が続くからこそ、Uruの音楽を聴いて心を和らげてみるのをおススメしたい。
(文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター 臼井孝)
著者プロフィール
うすい・たかし。1968年京都府出身。特技は1975年以降のバースデーソング占い(笑)。地元大学大学院理学研究科修了、専攻は理論化学(だったはず)。総合化学会社、音楽系広告代理店での数値解析やマーケティング実務を経て、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、音楽分析や配信サイトの選曲、コンピレーションや復刻CDの企画のほか、日経エンタテインメント!やfumufumu news、共同通信加盟社の各地方の新聞等で愛と情熱に満ちたコラムを執筆。Twitterは @t2umusic(よかったらフォローして下さい♪)
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