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ポップアイコン至上主義時代から音楽で勝負してきたAimer、感受性の高い10代に突出して人気

『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』(96)Aimer

話題のアーティストのセールス状況や新作の内容、タレントパワーランキングを見ながら、そのヒット傾向を読み解く『臼井孝のヒットは複眼で探せ!タレントパワーランキング編』。今回は、女性ボーカリストのAimerに注目。

覆面系女性アーティストのパイオニア

近年、AdoやUru、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。など、本名や顔などのプロフィールの一部、またはほぼ全部をメディアに公開しない女性アーティストが増えている。これは、その存在をミステリアスに演出する、というよりも、より音楽だけで勝負したい、その世界観を堪能してほしいというアーティスト側の想いがあるのだろう。

ポップアイコンが花盛りだった2010年代から着実に音楽の魅力でヒット

この21世紀以降の流れのフロンティアとしてはGReeeeN、そして女性アーティストとしてはAimerの成功が大きいだろう。

Aimerがメジャーデビューしたのは2011年。当時は、西野カナや木村カエラ、加藤ミリヤなどが同性の人気を呼び、音楽配信やアルバムが大ヒット、またAKB48はCDも音楽配信もミリオンヒットを連発していたが、それは、やはりポップアイコンとして、そのファッションや発言が強く支持され、AKB48の場合は何十人というメンバーがその魅力を放つことで無双状態になっていたと言える。

そんな時期から、孤独や儚さを感じる、その中でも決して諦めないという意志の強さも秘めたハスキーな歌声で作品を送ってきたのがAimerだ。

デビュー当時は、そのドラマティックな歌声からアニメタイアップとの相性が良く、『機動戦士ガンダムUC』の主題歌となった2013年の5thシングル「RE: I AM」で初のオリコンTOP10入り、以降もアニソンでとりわけCD、音楽配信共に好成績を残してきた。

2016年頃からはロック系のコラボでファンを拡大

また並行して、彼女の繊細さを丁寧に演出したコンセプトライブ “Live at anywhere”も2012年から開始。

2016年には、ONE OK ROCKのTaka、RADWIMPSの野田洋次郎が提供したシングルを相次いでリリースするなど、ロック・ミュージシャンとのコラボで、ロックファンの支持も増えていく。

現在も、ストリーミングでロングヒットを続ける「カタオモイ」は、andropの内澤崇仁による提供曲で、収録アルバム『daydream』、そして翌年の2枚同時に発売されたベスト盤『BEST SELECTION “blanc”』『BEST SELECTION “noir”』は、いずれも自己ベストのセールスを更新、2017年にはCDショップ大賞準大賞も受賞した。(この頃、一時的にテレビの音楽番組や情報番組にも幾度か出演していた。)

 

Aimer 6thオリジナルアルバム 『Walpurgis』 通常盤ジャケット画像

最新アルバムは、聞き流せない魅力の詰まった意欲作

そして、2021年には約2年ぶりとなる6thフルアルバム『Walpurgis』をリリース。北欧の春の祝祭を意味するタイトル通り、全14トラックの収録曲に異国情緒のある楽曲が多く、国境のみならず時代を超越したような普遍的な悲しみや孤独、そしてそれらを乗り越えようとする力を全体から感じさせる。

梶浦由記作品の「春はゆく」(劇場版「Fate/stay night[HF]」Ⅲ.spring song主題歌)が、アルバムを最も象徴しているドラマティックかつ繊細なナンバーだが、他の楽曲も思わず聞き入ってしまう。

例えば、「STAND-ALONE」(ドラマ『あなたの番です』主題歌)は、まさに一人で立ち向かっていくようなロック系のアッパーチューンだし、Vaundyが作詞・作曲・歌唱でコラボした「地球儀」(ネット番組『隣の恋は青く見える』主題歌)はお洒落で軽快なサウンドなのに、強い言葉で打破する感じが面白いし、民族楽曲や多重コーラスが効果的に使われている「Torches」(アニメ「ヴィンランド・サガ」エンディングテーマ)も、静かな曲調の中でも闇を抜けようとする強い力が漲っている。

このうち10曲の自作詞も相まって、どれもストリーミングで流しっぱなしにすることができないほど、メッセージ性が強い。でも、この聞き流せない魅力こそが彼女の真骨頂で、どんな時代でも必要とされる音楽ではないだろうか。

キャリアは10年選手でも、繊細な10代後半に支持される稀有な存在

そんな彼女のタレントパワーを見てみると、アルバムチャートではTOP5入りのヒット常連にもかかわらず、全体では10ポイント以下と、まだまだ知らない人が多いようだ。しかし、10代後半の男女に限定するとどちらも20ポイント前後と、その倍以上のタレントパワーがある。しかも、キャリア10年という中堅アーティストでありながら、10代の支持が増え続けているというのも興味深い。

それだけデリケートな世代により確実に浸透してきているということだろう。覆面系シンガーが急増している昨今だが、Aimerのように儚さや意志の強さといった大きな振り幅で感情に訴えるアーティストは類まれだ。

今後、SNSでの口コミやドラマや映画など物語性のあるタイアップにより、より多くの人がそのドラマティックな歌声に覚醒することを大いに期待している。

著者プロフィール

うすい・たかし。1968年京都府出身。特技は1975年以降のバースデーソング占いw。地元大学大学院理学研究科修了、専攻は理論化学(だったはず)。総合化学会社、音楽系広告代理店での数値解析やマーケティング実務を経て、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、音楽分析や配信サイトの選曲、コンピレーションや復刻CDの企画のほか、日経エンタテインメント!や共同通信『臼井孝の音楽玉手箱』などで愛と情熱に満ちたコラムを執筆。Twitterは @t2umusic(よかったらフォローして下さいませ♪)

また、コミュニティFM「渋谷のラジオ」にて水曜12時から『渋谷のザ・ベストテン』というベテラン・アーティスト中心の音楽番組を生放送でお送りしています。専用アプリから全国で生放送が聴けますし、過去のトーク部分は番組の(『渋谷のザ・ベストテン』note)  から聴くことができます。よろしければ♪

大人向けのプレイリスト『おとラボ』を選曲しています。是非お気軽に再生してください!

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