インタビュー

小川紗良「ほとんど自分」の監督役で映画主演

映画『ビューティフルドリーマー』(11月6日公開/本広克行監督)に主演し、大学の映画研究会で映画を監督するサラ役を演じる24歳の小川紗良。自身も早稲田大学で映画を学んだ「映像作家」としての顔を持つ。自身と重なる役への向き合い方と、2つの顔を持つようになった経緯とは?

「女優」と「監督」を同居させて挑んだ主演映画

——映画『ビューティフルドリーマー』のオファーを受けた時は、どう思われましたか。

本広監督は「さぬき映画祭」(香川県)のディレクターをされていて、私の監督作や出演作を何度か上映していただいたんです。そのたびに「映研の映画が撮りたい」と話をされていて、『ずっと話されてるな』と思っていたら、今回、こういう形で事務所にオファーがきて。私の監督の部分も女優の部分も知った上で、当て書きのような役をいただけたので、うれしかったです。

——サラ役の役作りはどのように?

自分とかけ離れた役だと、本を読んだり取材したり、いろいろとやることがあるんです。でも今回はほとんど自分のような設定だったので、学生時代を思い出しながら演じようと思いました。あと、女優業と監督業はなるべく並行してやらないようにしてるんですけど、今回は映画作りの映画だったので、例外として並行してやりましたね。

——例えば?

昼間は『ビューティフルドリーマー』の撮影で女優業をして、夜は家で自分の監督作の脚本を書く。四六時中映画のことを考えて過ごしていたので、映画に対するまっすぐな眼差しや集中力は、ずっと保っていられたかなと思います。

本当にオーディションをしているみたいでした

——本作は「監督絶対主義」を掲げた「シネマラボ」プロジェクトの第1作。本広監督は、以前からやりたかった即興芝居での映画作りに挑戦されたとか。

「そうです。台本は骨組みだけで、細かいセリフや動きは私たち役者が作っていくという形。しかも私たちの即興芝居を受けてストーリーが変わっていったので、みんな『どこに向かうんだろう?』って不安でした(笑)。それが撮影前の稽古期間。クランクインしてからも、その場その場でお芝居を生み出していく感じでしたね。

——即興で作っていく良さは、どういうところにあったと思いますか?

私たちの関係性がダイレクトに出るのが面白かったです。最初の頃に撮ったシーンはまだ緊張感があったんですけど、撮影の合間にみんなでトランプをして遊んだりしていたので、グッと仲良くなって。そうすると、役としてどんどん会話ができるようになって、お芝居をした感覚がなかったです。

——みなさんの自然な演技が魅力的でした。オーディションのシーンなんて、本当に素っぽい。

本広さんが「どんどん無茶を言っていいよ」という感じだったので、私たちも思い付いたことをどんどん言って、アドリブで演じてもらってました。だから、オーディションに本当に来た人たち、みたいになってましたよね(笑)。

——完成した作品には、映画制作の裏側を知れる楽しさもありました。見る人には、どんなふうに感じてもらえるとうれしいですか?

映画作りをした経験がある人には、懐かしさを感じてもらえて、夢を追いかける感じにもグッとくるものがあると思います。映画作りをしたことがなくても、何かに打ち込んだ経験がある人なら、その経験に置き換えて楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。学生がわちゃわちゃしているところも微笑ましかったりするので、現在進行形で学生の方たちには、等身大の青春映画として楽しんでもらえたらいいなと思います。

早稲田大学で是枝裕和監督に映画を学ぶ

——大学時代に撮った短編、中編映画が「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」などに入選。監督としても注目されていますが、女優業と監督業はどちらが先にスタートしたんですか?

作る方が先なんです。高校時代に文化祭や体育祭のドキュメンタリーを撮ったのが最初。作る過程は大変だったんですけど、上映すると、みんなが笑ったり感動したりしながら、思い出を振り返ってくれて。「自分が作ったもので、人の心が動くんだ」という衝撃がありました。

——女優業の方は?

それも高校時代に始めたんですけど、小さい頃から憧れはあって。都心の高校に通って出版社などが身近になった時に、ちょっと飛び込んでみようと思ったのがきっかけでした。

——女優をしながら、早稲田大学に進学されたのはなぜ?

芸術系の大学に行くことも考えたんです。でも、映画に携わるために映画のことばかり勉強したり、映画好きの人ばかりが集まっている環境に行くと、視野が狭くなる。映画で描かれるのは社会や文化なので、全然知らない世界を知ったり、絶対に関わらないような人たちがいるところに身を置いた方が、より意味があるんじゃないかと考えて、普通の総合大学に進学することにしました。

——是枝裕和監督が教鞭を執る大学だからっていうのも、理由としてありましたか?

是枝さんは私と同じ年に早稲田に来られたので、入るまで知らなかったんです。入ったらいらっしゃったので、これは貴重な機会だと思って、授業を受けに行ったという感じです。

——是枝監督に学んだことは?

たくさんあるんですけど、一番は映画作りの姿勢です。準備してきたことにとらわれず、現場で生まれたものをいかに大切に拾う。そこはすごく学んだなと思います。

来年は『海辺の金魚』で長編監督デビューを予定

——昨年は初の長編『海辺の金魚』を撮られたそうですね。短編と長編は違いました?

違いましたね。毎回、脚本を書くのが一番大変なんですけど、長編となると、ストーリーのうねりや膨らませ方が変わってくる。イチから勉強し直して、何回も書き直しました。

——撮影監督に山﨑裕さん(『誰も知らない』『奇跡』など是枝作品で知られる大御所カメラマン)を起用。山﨑さんにお願いしたのは、なぜですか。

『海辺の金魚』は児童養護施設を舞台にしていて、子どもたちがたくさん出てくるんです。日本で子どもを撮ることに長けたカメラマンと言ったら、真っ先に山﨑さんが浮かんで。大ベテランなので「どうしよう…」と思ったんですけど、若いうちに知恵や経験を間近で吸収したいという思いもあったので、思い切ってオファーしました。

——オファーというか、バッタリお会いしたそうですね。

そうなんですよ。私が過去作や資料をまとめて山﨑さんのポストに入れようとしていたら、たまたまご本人が通りがかったので、直接渡したという。予期せぬ直談判になったんですけど(笑)。でも、すごくラッキーだったなと思います。

——公開は?

コロナの影響で延期になって、来年を予定しています。(後篇に続く)

小川紗良(おがわ・さら)

誕生日 1996年6月8日
出身地 東京都
所属事務所 ヒラタオフィス
公式サイト http://www.hirata-office.jp/talent_profile/woman/sara_ogawa.html
公式ツイッター https://twitter.com/iam_ogawasara
公式note https://note.com/ogawasara

 

映画『ビューティフルドリーマー』

2020年11月6日から全国公開
監督:本広克行
出演:小川紗良、藤谷理子、神尾楓珠、内田倭史、ヒロシエリ、森田甘路、伊織もえ、かざり、斎藤工、秋元才加、池田純矢、飯島寛騎、升毅
原案:押井守『夢みる人』
脚本:守口悠介
配給:エイベックス・ピクチャーズ
(C)2020映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会