女性タレント

蒔田彩珠「役積み」で中学に登校、新聞配達も!

今年は『#ハンド全力』(松居大悟監督)、『星の子』(大森立嗣監督)、『朝が来る』(河瀨直美監督)と3本の映画で注目度を上げた18歳の蒔田彩珠。なかでも『朝が来る』では、14歳で子どもを産んで養子に出す少女・片倉ひかり役で見る者の心を揺さぶる。難役にどのように挑んだのか。

「役積み」で中学に通い、新聞配達も経験

——『朝が来る』の前半は、蒔田さん演じる片倉ひかりの輝きがまぶしく、後半はせつないドラマに胸を打たれました。どんな感想を言われることが多いですか?

最初の輝いている時から落ちていくまでの変化がすごいって言われることが多いです。そこをきちんと表現したかったので、言われるとうれしいですね。

——そもそも、この作品との出会いは?

オーディションです。まず「原作を読んで来て」と言われて、読んだらすごく面白くて。「この作品に参加できたら、絶対にいい経験になる。ぜひやりたい」と思いました。

——オーディションはいかがでしたか?

その場で設定を言われて演じたり、「ひかりをどう演じたいか」みたいな話を長い時間、河瀨さんとしましたね。そこで私が「ひかりは強くて優しい女の子だと思います」とか話しても、河瀨さんは「ああ、うん」みたいな感じで、あまり手応えがない(笑)。だからオーディションに受かったときは驚きました。うれしいと同時に、少し不安にもなりましたね。河瀨さんの現場はハードだと聞くこともあったので。

——どうハードだと?

撮影に入る前に、何週間も実際にその役と同じ生活を送る「役積み」をすると聞きました。実際にやってみると、その期間があるのとないのとでは違うなと思いました。

——今回はどんな「役積み」をしましたか。

ひかりが通う中学校に2〜3週間通って、授業を受けて、部活もやってました。みんな私が同い年の転校生だと思ったみたいで、そのまま撮影当日まで通しました(笑)。そして下校してひかりの家に帰ったら、家族役のみんなと寝食を共にする。誰が最初にお風呂に入るかって、よくケンカしてました(笑)。新聞配達もしましたね。寮に1週間くらい住んで、3時起きで5時くらいまで配達して、帰ってまた寝る。早起きはつらいし、配達中はまだ外が暗くて、寂しい気持ちになるんですよ。「ひかりも、こんな気持ちになったんだろうな」って。

傷付くシーンでは、私も傷付きました

——撮影はいかがでしたか?

あんまり撮影現場っていう感じがなくて。本番中はカメラマンさんと音声さんくらいしか私の目には入らなくて、ほかのスタッフさんたちはみんな隠れてるんですよ。監督も「よーい、ハイ!」みたいなことは言わなくて、現場に着いた時にはカメラが回ってる(笑)。最初の頃は慣れなくて大変でしたけど、最後の方ではやりやすかったです。

——過酷な人生を送る役でした。演じながら、蒔田さん自身も傷付いたりは?

スタッフのみなさんも共演者のみなさんも、撮影期間中ずっと私のことを「ひかり」と呼んでくれていたので、役に没頭できて。ひかりが傷付いたら私も傷付くし、つらいシーンの時は、本当につらかったですね。それもあって、1回泣き出すと涙が止まなくて。めったに近くに来ない監督がやってきて、「泣かないで。泣くことは誰にでもできるから」と言われたこともありました。

——クランクアップの時は、どんな気持ちになりましたか。

初めて監督が「彩珠」って呼んでくれたんですよ。それでやっと「終わった〜!」って感じがしました(笑)。

——安堵したと(笑)。映画を見る方には、どう受け取ってもらえるとうれしいですか?

大人の人が見る映画だと思われがちですけど、私くらいの年代の人が見ても引き込まれる映画だと思います。特に養子縁組は、産んで育てられなかった側のことを知る機会が本当に少ないと思います。映画を見て、ひかりみたいな人生もあるんだと知ってもらえたらうれしいです。

 

蒔田彩珠(まきた・あじゅ)

誕生日 2002年8月7日
出身地 神奈川県
所属事務所 ユマニテ
公式サイト http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=35
公式インスタグラム https://www.instagram.com/makita_aju/?hl=ja

 

映画『朝が来る』

2020年10月23日から全国公開
監督・脚本・撮影:河瀨直美
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺、田中偉登、中島ひろ子 平原テツ、駒井蓮、利重剛
原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
共同脚本:髙橋泉
配給:キノフィルムズ/木下グループ
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