旬の女優インタビュー 池田エライザ・前篇
モデルとして幅広く活躍するほか、au「三太郎」シリーズCMの親指姫役や主演映画『貞子』でも注目を集めた池田エライザ。彼女が原案・監督を手がけた映画『夏、至るころ』が12月4日より、全国順次公開される。「地域」「食」「高校生」をテーマにした青春映画プロジェクト「ぼくらのレシピ図鑑」シリーズの第2弾として制作されたこの映画は、福岡県田川市を物語の舞台に、夏祭りを前にして自分の人生に向き合うことになる高校生たちの姿を描き、倉悠貴が映画初主演。インタビューの前篇では「映画監督初挑戦」の感想やエピソードをうかがい、後篇では池田エライザの素顔に迫る。
台風が来ていても、私が撮影を始めると必ず晴れました

──映画監督というお仕事には、いつ頃から興味を持っていたのですか?
演技に携わらせていただくようになってから自然とやりたいと思うようになっていて、ずっと関心はありました。女優として撮影期間中だけ携わるのではなく、作品が完成して公開されるまで携わりたいなって。
──映画の撮影が始まる前に、物語の舞台になった福岡県の田川市をシナハンやロケハンしたそうですね。
行く前にも田川市について自分で調べたりしてたんですけど、やっぱり実際に行ってみるといろんなことを感じましたね。映画には町の香りや温度、湿度が映り込むと思うので、なるべくそういうものを実直に、正確にとらえていきたいなと。なので、物語を最初に考えていたちょっと昔の話から現代劇に変えて、より素朴な話になりました。
──田川市は、どんな町なのですか?
学生のほとんどが車通学なんですよね。学校が家から離れていて、電車もあまりないので親が運転する車で校門まで送るというのがよくある形で。だから、大人が子供に密にかかわることになるんですよ。「町の子はみんな自分の子」みたいな、子どもたちとの関係性が深い環境で、ごはん屋さんに行くと普通に大盛りにしてくれるんです。「食べれないかも」と言うと、「だいじょうぶ、食べれるから」って(笑)。
──よその家の子どもたちも町の人がやさしく見守っているんですね。
ひなが卵の殻を自分で破って出てくるのをみんなが「がんばれ、がんばれ」って応援しているような感じが、町全体にありましたね。町のやさしさが時には人をこじらせるし、愛情が深いゆえに反抗的になってしまうこともある。そういう環境が、いろんな個性的な芸能人の方を生んでいるゆえんにもなってるのかなって。町を誇張して描かなくても、そこにある人間関係を描くだけで映画が撮れるのかなと思いました。
──映画を屋外で撮影していると、どうしても天候に左右されるものですが、雨の日が続いたときに、スケジュールと予算が許す限り晴れるまで待つ監督か、雨を生かした脚本に変えようという監督か、この2つなら、どちらのタイプですか?
私は3つ目で、晴れになります(笑)。この映画の撮影中も台風が来て、それまでは車が吹き飛ばされそうなくらいに雨が降っていても、私が外に出て撮影を始めると、なぜか必ず晴れになりました。でも、雨を生かしたシーンもあります。「ここは雨のほうがいいんじゃないかな」と思ったので、本物の雨だからこその美しさを撮影部や照明部のスタッフさんたちに出していただいて、印象的なシーンになりました。

──女優としてお仕事をするときの撮影現場の天候は、どうですか?
すごく晴れます(笑)。そこに運を使ってしまうのも…っていうくらいに、運がいいですね。
──今まで女優をしていたことで、監督業に役立った部分はありますか?
小学生のころからずっと小説を書き溜めていたので、女優をやっていなくても脚本に関心を抱いていた可能性はありますけど、女優をやっていたからこそ、演出で最善を尽くせたと思うし、スタッフの苦労を聞いてきたからこそ、身を滅ぼすくらいに続けるのでなはく、夕方になったら「はい、終わり」みたいな、ホワイトな職場になったんじゃないかなって。そのぶん、準備には時間をかけましたね。先にカメラ割りをしておいて、だけど現場で芝居を見て、「やっぱり、カットバックにしようね」と思ったときには柔軟に対応できようにしておいたり。「50ミリのレンズで、バストアップでだいじょうぶだから、そこからレールで寄って行って」と具体的にすぐに言えるように、機材の名前も覚えて準備しました。
──映画監督をするにあたって、いろいろと知らないといけない知識や理論もあるかと思いますが、どのように勉強しましたか?
早い段階から「映画を撮りたいな」と思っていたので、女優としてお仕事をしている現場で、いつも「そのシネレンズは?」とか撮影部のスタッフさんに聞いたり、照明部の方に「これは雨が晴れになる魔法の照明なんだよ」と教えてもらったりしてました。女優としては、把握しすぎていると画角通りの芝居になってしまうので、その知識を捨てないといけない瞬間もありましたが、楽しみながら勉強してました。
──映画『夏、至るころ』は、どのようなところに注目して見てほしいですか?
なるべく見てる人を操作しないように撮りました。細かくカットを割ると、視点を定めることになって、どうしても説明的になるので、割らないようにして。どの世代の人でも、誰でも共感できるし、どの登場人物も主軸として見ることができる映画にしたかった。だから、見てくださる人に「こういう映画です」とひとことで言うのは難しいですけど、ただ思いとしては、携帯電話を操作する2時間と映画を見る2時間の過ぎ方の違いを感じてほしいですし、自分を思いやる時間にしてほしい。映画を見て、セミがなく声とか、横丁の曲がり角のおばちゃん家の煮魚の匂いとか、人の原体験に視覚と聴覚で触れてほしいですね。かつては自分もこういうことを大切にしたのに、情報過多になった今の世の中で、未来のことばかり心配して自分を作り上げてきたものについて目を向けるのを怠ってきたなと思う人に、自分の豊かさや可能性を大切にして、わくわくしてほしいです。思いがこもって、話がすごく長くなってしまいました(笑)。
■映画『夏、至るころ』
2020年12月4日より全国順次公開原案・監督:池田エライザ
脚本:下田悠子
出演:倉悠貴 石内呂依 さいとうなり
安部賢一 杉野希妃 後藤成貴
大塚まさじ 高良健吾 リリー・フランキー 原日出子
配給:キネマ旬報社DD 映画24区
(C)2020「夏、至るころ」製作委員会
池田エライザ(いけだ・えらいざ)
誕生日 1996年4月16日
出身地 福岡県
所属事務所 エヴァーグリーン・エンタテイメント
公式サイト http://www.elaiza.com/
公式インスタグラム https://www.instagram.com/elaiza_ikd/