ビール類(発泡酒、新ジャンルを含む)のCMには、多くの人気女性タレントが起用されています。長期にわたってCMに出演して、そのビール類の「顔」として定着しているベテランも少なくありません。
その一方で、ビール酒造組合などによって構成される「飲酒に関する連絡協議会」が2016年に「25歳未満を広告のモデルに起用しない」という自主規制ルールを定めたことによって、最近は人気若手女優が25歳になるのを待ち構えて、いち早くビール類のCMに起用する“争奪戦”が展開されています。
広瀬すずは2023年6月19日に25歳の誕生日を迎えて、その約1カ月後の7月10日からサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」“すず登場”編のCMに出演。橋本環奈は25歳になった2024年2月3日の約1カ月半後の3月24日にアサヒ「ドライクリスタル」でビールCMデビューしました。
最近では、2025年12月19日に25歳となったばかりの河合優実が2026年2月6日からサントリー「生ビール」の新CMに起用され、話題を集めています。2026年前期NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『風、薫る』でヒロインを演じる見上愛は2025年10月26日に25歳となり、2026年1月からサッポロ「ヱビス」のCMで山田裕貴らと共演しています。
女性タレントが出演するビール類CMの傾向
人気を集めたビール類のCMとしては、檀れいが2007年から2019年12月まで約12年間にわたって出演していたサントリー「金麦」が挙げられます。2020年から石原さとみが起用され、現在から黒木華が出演しています。同系統のカメラ目線で語りかける癒し系CMとしては、アサヒ「生ビール〈マルエフ〉」に2021年9月から2023年2月まで新垣結衣が出演して、現在は芳根京子が活躍しています。
タモリが2020年から2024年までメイン出演したキリン「本麒麟」のCMは、共演する高畑充希、杏、滝川クリステル、広瀬アリスらがビールを飲んだ感想を言うというスタイルの内容でした。同じように、CMに出演する女性タレントが「ビールを飲んだ感想を語る」タイプのCMの系譜を受け継いでいるものとしては、最近では天海祐希、今田美桜が出演するキリン「晴れ風」、綾瀬はるか、浜辺美波が出演するキリン「グッドエール」、この手法は特にキリンビールが得意としています。
タレントパワーランキングの調査方法
株式会社アーキテクトでは年に4回(2月/5月/8月/11月)、毎回男女10~69歳の合計4400人に回答を依頼しています。調査しているのは「認知度」(そのタレントを知っているかどうかの数値)、「誘引率」(「知っている」と答えた人に対して、そのタレントがドラマやCMに出ていて観たいと思うかどうかの数値)で、「認知度」と「誘引率」を掛け合わせて、そのタレントが、どれだけの人たちを惹きつけているか、「人気度」を示す弊社独自の指標「パワースコア」を算出します。
また、イメージデータ調査では、タレントのジャンルごとに決められているイメージワードから3つのワードを選ぶ方法によって、そのタレントがどのようなイメージを持たれているかを年に1回調査しています。今回は2025年11月度に実施した調査結果のデータを中心に使用しています。※年齢などは2026年3月1日時点。
ビール類CMに出演している女性タレント
アサヒ「スーパードライ」
長澤まさみ
1987年6月3日生まれ、静岡県出身の38歳。2000年に「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリに輝き、12歳で芸能界入り。2004年に映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で注目を集め、以後多くのドラマや映画に出演。最近では2025年10月に主演映画『おーい、応為』が公開。
グループ会社のアサヒ飲料が販売する「カルピス」のCMに長年出演してきたこともあり、アサヒビールのCMには2020年から起用され、「スーパードライ」のCMにも出演中。同年11月からオンエアされている「“キンキンDRY”のうまさ、実感」編では、専用タンブラーに注がれたキンキンに冷えたビールを飲み干します。
タレントパワーランキングの最新調査結果を年代別に見ると30代前半から同後半に加えて50代以上でもパワースコアが高く、「スーパードライ」が幅広い年代で支持されていることに通じるものがあります。
サントリー「金麦」
黒木華
1990年3月14日生まれ、大阪府出身の35歳。2010年に女優デビュー。2014年に映画『小さいおうち』での演技が高く評価されて、ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞しました。2026年4月スタート予定のドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジ系)で主人公の東京都知事選選挙参謀を演じます。
サントリーのビール類CMには2015年から「オールフリー」(ノンアルコールビールテイスト飲料)のCMで活躍した後、2022年から「金麦」(発泡酒②)のCMに柳楽優弥と同じ町に暮らす2人という設定で出演。2025年からは竹野内豊と共演する新シリーズがスタートしています。
タレントパワーランキングのイメージワード調査では「演技力がある」「個性的な」と並んで、「落ち着いた」「親しみやすい」のスコアが高く、帰宅後の家時間をテーマにした「金麦」のCM内容にぴったりな存在となっています。
※発泡酒②・・・発泡酒に麦原料スピリッツを加えて作られた製品。いわゆる「新ジャンル」の酒税区分。なお、「金麦」は2026年10月の酒税法改正に合わせて区分がビールに変更される予定。
キリン「一番搾りホワイトビール」
小芝風花
1997年4月16日生まれ、大阪府出身の28歳。2011年に芸能界入り。2019年に『トクサツガガガ』(NHK)で連ドラ初主演。2025年度のNHK大河ドラマ『べらぼう』では花魁役で活躍しました。2026年3月27日公開の『映画えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』で声優を務めています。
キリン一番搾りのシリーズ商品として2025年4月から発売された「一番搾りホワイトビール」のCMに新発売と同時に起用。「一番搾り生ビール」CM出演者の先輩である堤真一、賀来賢人、鈴木亮平から届いた手紙を読んだ後、ビールを飲んで感想を語ります。
年代別では40代後半以上と並んで30代前半の支持が高い女優で、飲みやすさを追求したビールを自分であまり買わない層を意識した新製品のCMへの起用につながったのではないでしょうか。
キリン「グッドエール」
綾瀬はるか
1985年3月24日生まれ、広島県出身の40歳。2000年に開催された「ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞に輝き、芸能界入り。2013年にはNHK大河ドラマ『八重の桜』で主演しました。2026年5月公開予定の映画『箱の中の羊』では千鳥の大悟と夫婦役を演じてW主演します。ユニクロ、フジパンなど多くのCMに出演中。
「一番搾り」「晴れ風」と並ぶキリンビールの3本柱の一角を狙う新商品として2025年に投入された「グッドエール」のブランドリーダーにMrs.GREEN APPLE、浜辺美波、鈴木亮平とともに就任。“キリングッドエール まったく新しいキリンビールはじまる”編では約200名のビッグバンドとともに登場して、綾瀬が新商品の誕生を宣言。
タレントパワーランキングの総合ランキングでは女性2位(1位は新垣結衣)。根強い支持を集め、2023年以降の計12回の調査期のうち8回で女性1位を獲得しています。
キリン「晴れ風」
天海祐希
1967年8月8日生まれ、東京都出身の58歳。宝塚歌劇団の男役トップスターを経て、多くのドラマや映画で主演。代表作にドラマ『離婚弁護士』(フジ系)、『BOSS』(フジ系)、『緊急取調室』(テレ朝系)などがあります。2025年12月には主演映画『劇場版「緊急取調室 THE FINAL」』が公開されました。
キリンが2024年に発売してヒット商品となった晴れ風のCMにSnow Manの目黒蓮、今田美桜、内村光良とともに出演中。2026年1月1日から放映された「ハレの日、晴れ風。」年始編では、今田美桜とともにおみくじをひく様子などが、町の人達の情景を混じえて描かれました。
『BOSS』『緊急取調室』をはじめリーダーシップを担う強い役を演じることも多く、イメージワード調査では「演技力がある」に加えて、「力強い」「カリスマ性がある」の数値が高くなっています。彼女の存在のインパクトの強さから印象深いCMが生まれ、ブランドが浸透して商品ヒットに繋がったのではないでしょうか。
キリン「晴れ風」
今田美桜
1997年3月5日生まれ、福岡県出身の28歳。福岡のモデル事務所で活動後、2016年夏に上京。2025年の前期NHK連続テレビ小説『あんぱん』でヒロインを演じました。2026年9月に主演映画『白鳥とコウモリ』が公開されます。
2022年にキリンのウイスキー「陸」(現在も出演中)で酒類CMデビューを果たし、2024年から天海祐希らとキリン「晴れ風」のCMに出演しています。
イメージワード調査では「ビジュアルが良い」「かわいい」のスコアが群を抜いて高いほか、「親しみやすい」「活発な」「健康的な」も高くなっており、アクティブで明るいイメージが相次ぐCM起用に繋がったのではないでしょうか。
アサヒ「クリアアサヒ」
吉岡里帆
1993年1月15日生まれ、京都府出身の33歳。地元・関西で小劇場の舞台や自主映画に出演した後、2015年に上京。2015年後期NHK朝ドラ『あさが来た』でヒロインの親友を演じて注目を集め、2016年にはリクルート「ゼクシィ」の9代目CMガールに選ばれるなど、CM起用が増えました。2026年度NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に出演中です。
「クリアアサヒ」(発泡酒②)のCMに北村匠海とともに2024年から出演中。2025年から吉岡と北村が缶を手に商品の特徴を語る「まだクリアを飲んでいない人へ」篇、「全国のクリア好きのみなさんへ」篇、「最近、クリアを飲んでいない人へ」篇が放映開始され、全方位にアピール。
イメージワード調査結果では「ビジュアルが良い」「かわいい」「親しみやすい」に加えて「清潔感がある」「健康的な」「優しい」の数値も高く、「すっきり・爽快」を重視したニーズをターゲットとしている製品イメージと親和性があります。
サントリー「生ビール」
河合優実
2000年12月19日生まれ、東京都出身の25歳。2024年に宮藤官九郎脚本によるドラマ『不適切にもほどがある』(TBS系)に出演して、知名度が急上昇。主演映画『あんのこと』『ナミビアの砂漠』で存在感がある演技が脚光を浴びて、2024年度の映画賞を多数受賞。2025年前期NHK連続 テレビ小説『あんぱん』では今田美桜の妹役を演じました。
これまでは上白石萌音、山﨑賢人らの共演による定食屋を舞台にしたCMでおなじみだったサントリー「生ビール」のリニューアルに合わせて、2026年2月からCMに単独で出演しています。「はじまりの青」篇では坂本九の名曲「上を向いて歩こう」を口ずさみ、「沁み渡る青」篇では縁側でジョッキビールを味わって、ナレーションも担当しています。
全年齢での認知度はまだ42.5%(女優部門150位)ですが、20代から60代まで幅広い年代でパワースコアが上昇中で、さまざまな層からの支持でヒットしたサントリー生ビールのCMにハマる旬の女優として起用されています。
キリン「一番搾り」
満島ひかり
1985年11月30日生まれ、沖縄県出身。ダンス&ボーカルグループ「Folder5」のメンバーとしてデビュー。2013年に『Woman』(日テレ系)で民放連ドラ初主演して、注目の演技派主演級女優に浮上しました。2021年から出演しているUQモバイルのCMでは松田龍平と共演。
2017年からキリン一番搾り生ビールのCMに出演。2025年11月から放映された飲めや歌えや 「食べ物」篇、飲めや歌えや「年末」篇では堤真一、福原遥、賀来賢人、小芝風花と共演しました。男性全年齢におけるパワースコアが21.9ポイントに対して女性全年齢では29.3ポイントと女性支持が高い女優で、CM起用によって女性層へのアピールにも繋がるのではないでしょうか。
アサヒ生ビール「マルエフ」
芳根京子
1997年2月28日生まれ、東京都出身の29歳。2015年に『表参道高校合唱部!』(TBS系)で連ドラ初主演。2016年には後期NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインを演じました。2026年春に主演ドラマ『有罪、とAIは告げた』(NHK BS)が放送される予定。
2023年からアサヒ生ビール(マルエフ)のCMに松下洸平とともに出演中。ビールグラスを片手に「おつかれ生です。」のフレーズを優しく語りかけ、好感を集めています。
イメージワード調査でスコアが高かったワードは「親しみやすい」「かわいい」が同率トップで、次いで「演技力がある」「清潔感がある」が高くなっています。親しみやすさが起用に繋がったのではないでしょうか。
まとめ
ビール類のCMに起用される女性タレントは、演技派の女優が多くなっています。ただし、この商品ジャンルではストーリー性があるドラマ仕立てのCMは少なく、自身のキャラクターで語りかける内容が主流となっています。したがって、演技力よりも親しみやすさや清潔感、活発なイメージなどが重視される傾向が、CMに出演している女優のイメージワード調査結果からもうかがうことができます。
男女タレントが共演するビール類CMの最近の傾向としては、「晴れ風」の天海祐希×今田美桜、「グッドエール」の綾瀬はるか×浜辺美波、「一番搾りホワイトビール」の堤真一×小芝風花、サントリー「パーフェクトビール」の堺雅人・山本耕史×奈緒、アサヒ「ザ・ビタリスト」の真田広之×二階堂ふみ・吉川愛など、ベテラン俳優と20代後半から30代の若手女優という組み合わせによって幅広い年齢層に訴求するCMが増えています。
ビールを苦手とする若年層の消費の掘り起こしを期待された存在として、CMに出演する若手女優が果たす役割は大きいと思われます。
☆タレントパワーランキングを活用して、キャスティングにぴったりなタレントを見つけてみませんか?
毎回1280名のタレントについて調査しているタレントパワーランキングのデータを精査すれば、「いま、ビール類のCMに起用すると効果的な女性タレントは誰なのか」が見えてくるはずです。
タレントパワーランキングでは、ビール類のCMに出演している女性タレントの年代別認知度やタレントパワーを知ることができるほか、既にCMに出演しているタレントに世間でのイメージが似ている相似タレントをコンピュータがはじき出す機能もあります。
文/高倉文紀
俳優評論家。『日経エンタテインメント!』(日経BP社)、『時事年鑑』(時事通信社)、『C&Bまるごと1冊CM美女』(晋遊舎)、『CMアイドル名鑑』(ぶんか社)などでCMタレント・広告に関する記事を執筆してきた。現在はタレントパワーランキングのウェブサイトで執筆を担当するほか、『日刊ゲンダイ』などの新聞・雑誌・ウェブサイトで俳優・アイドルの取材やタレント市場分析を展開している。
