不動産・住宅は競争が激しい業界の1つであり、各社が認知度上昇やイメージアップのために人気タレントをCMに起用しています。2023年にはオープンハウスのCMに木村拓哉が起用されて話題を集めました(現在は終了)。同じ不動産業界でも、住宅メーカー(ハウスメーカー)や不動産会社・デベロッパーと不動産情報サイトでは起用されるタレントの傾向が異なります。
不動産・住宅メーカーのCMには、どのようなタイプのタレントが起用される傾向があるのでしょうか。ここでは日本最大級規模のタレント調査「タレントパワーランキング」のデータをもとに、この分野のCMに出演している主な男女タレントの世間でのイメージや年代別タレントパワーを分析します。
不動産・住宅メーカーのCMの傾向
不動産業界に属する企業には、自社で住宅供給を行う住宅メーカー、不動産の売買や開発・分譲を行う不動産会社・デベロッパー、賃貸・分譲情報サイトの運営や不動産業務ソリューションの提供を行う不動産情報会社などがあります。
不動産広告は、新聞広告や交通広告ではマンションなどの具体的な新規物件のPRを展開するのに対して、テレビCMでは自社の事業内容を伝える企業広告を出稿するケースが多くなっています。不動産会社・デベロッパーや住宅メーカーの企業CMには、自社のメッセージを伝えるために、ストーリー仕立てで連続ドラマ・映画風の作りになっているものが目立ちます。
これに対して、不動産情報会社のCMは親しみやすいタレントや俳優が起用してサイトの機能をわかりやすく伝える内容が多くなっています。若い層にアピールするために、「LIFULL HOME’S」の川口春奈、「CHINTAI」のなにわ男子の大橋和也、「いい部屋ネット」の畑芽育 、「アットホーム」の出口夏希など、20代~30代の若手俳優が起用されるケースが少なくありません。
不動産・住宅メーカーのCMに出演している男性タレント・女性タレントの紹介方法
今回は、不動産・住宅メーカーのCMに出演しているタレントについて、男女各5名をピックアップして、『株式会社アーキテクト』が実施しているタレントパワーランキングの調査データとともに紹介します。
タレントパワーランキングの調査方法
株式会社アーキテクトでは年に4回(2月/5月/8月/11月)、毎回男女10~69歳の合計4400人に回答を依頼しています。調査しているのは「認知度」(そのタレントを知っているかどうかの数値)、「誘引率」(「知っている」と答えた人に対して、そのタレントがドラマやCMに出ていて観たいと思うかどうかの数値)で、「認知度」と「誘引率」を掛け合わせて、そのタレントが、どれだけの人たちを惹きつけているか、「人気度」を示す弊社独自の指標「パワースコア」を算出します。
また、イメージデータ調査では、タレントのジャンルごとに決められているイメージワードから選ぶ方法によって、そのタレントがどのようなイメージを持たれているかを年に1回調査しています。
※年齢などは2026年1月10日時点。
不動産・住宅のCMに出演している男性タレント
(オープンハウス)
堺雅人
1973年10月14日生まれ、宮崎県出身の52歳。舞台での活動を経て、テレビドラマや映画で活躍。2013年に主演ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で大きな注目を集め、2016年にはNHK大河ドラマ『真田丸』で主演。2023年に放送されて人気を集めた主演ドラマ『VIVANT』(TBS系)の続編が2026年にオンエアされます。
新築戸建を中心とした不動産販売を手がける「オープンハウス」のCMに2024年から出演。巨大化した堺がかいじゅうと戦ってマイホームを購入した土地を守る、コミカルな要素を含むシリーズが展開されています。タレントパワーランキングの2025年11月度調査では男優・男性タレント部門14位、50代男優4位。 イメージワード調査では「演技力がある」が70.4%で圧倒的に多く、次いで多かった回答が「個性的な」39.5%、「存在感がある」32.6% 。インパクトを与える演技派男優としての印象の強さが、ストーリー仕立てのシリーズCMへの起用要因になったと思われます。
(アットホーム)
松重豊
1963年1月19日生まれ、福岡県出身の62歳。蜷川幸雄主宰の「GEKI-SHA NINAGAWA STUDIO」の劇団員などを経て、ドラマや映画のバイプレイヤーとして活躍。2012年にスタートしたグルメドラマ『孤独のグルメ』(テレ東系)で連ドラに初主演して脚光を浴びました。2020年代に入ってCM起用が増えて、現在は法人向け名刺管理サービスのSansan、ライオン「デントヘルス薬用ハミガキDXプレミアム」などのCMにも出演しています。
11月度調査では60代男優4位。年代別に見ると、30代から60代を中心に幅広い年齢層で支持されています。誘引率は60代男優3位(1位・光石研、2位・阿部寛)で、世間の関心度・好感度の高さがうかがえます。 不動産情報サイト「アットホーム」のCMには2022年から出演。2024年12月からイメージキャラクターに加わった女優の出口夏希が賃貸物件情報をメインとしたバージョンに出演して若い層にアピールしているのに対し、松重は2025年10月から放送開始となった注文住宅の検討をテーマにした“注文住宅サイト探索”新発見篇に『ウォーリーを探せ』のキャラクター「ウォーリー」とともに出演しています。ターゲットとなる30代以上での認知度の高さが、CM起用につながっていると推測されます。
(東急リバブル)
岡田准一
1980年11月18日生まれ、大阪府出身の45歳。1995年から2021年までV6/Coming Centuryのメンバーとして活躍。演技派俳優としての評価が高く、2014年にはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で主演。2025年にNetflixで配信された時代劇ドラマ『イクサガミ』では主演に加え、プロデュースも手がけました。
東急グループの不動産会社「東急リバブル」が創立50周年を迎えた2022年からCMに出演して、不動産のプロとして奮闘する営業マンを演じています。年代別パワースコアでは50代前半のスコアが最も高く、30代・40代でも高いスコアを示していることから、新築販売仲介をメインとした同社のイメージに合致したと考えられます。 イメージワード調査では「演技力がある」「男前な」「力強い」の3つのワードの割合が高く、信頼できる営業マンの姿を力強く演じているお仕事ドラマ風のCM内容になったことがうなずけます。
(大和ハウス工業)
西島秀俊
1971年3月29日生まれ、東京都出身の54歳。1992年に俳優デビュー。『MOZU』(TBS系・2014年)、『きのう何食べた?』(テレ東系・2019年)などのドラマで主演。2021年には主演映画『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞国際長編映画賞に輝き、海外でも演技力が評価されました。2025年12月19日から主演ドラマ『人間標本』(Amazon Prime Video)が配信されています。
2022年から大手住宅メーカー「大和ハウス工業」の企業CMでヒーローキャラクター「ダイワマン」を演じています(2009~2011年に役所広司が演じていたシリーズのSeason2)。11月度調査で50代男優5位にランクイン。認知度では50代男優14位ですが、誘引率は4位で50代男優上位4名を上回っています。40代後半から60代のパワースコアが高く、年配層での人気がハウスメーカーのターゲットと合致しています。
(積水ハウス不動産)
神木隆之介
1993年5月19日生まれ、埼玉県出身の32歳。子役としての活躍を経て、連ドラや映画で活躍。2023年にはNHK連続テレビ小説『らんまん』で主演。2025年10月期はドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジ系)に出演しました。CM出演も多く、KDDI「au」、宝くじ、三菱電機などに出演しています。
2025年1月、積水ハウスグループの「積水ハウス不動産」が仲介・不動産事業に特化した専門会社に生まれ変わったのを期に、CM起用。「略して、積水ハウス不動産。のTVCM」篇では、自分の家を買うことになって実家の父親に積水ハウス不動産の特徴を伝える息子を演じています。30代を代表する男優のひとりで、11月度調査では30代男優4位。 イメージワード調査では「演技力がある」「優しい」「さわやかな」のスコアが高く、こうしたイメージがCMの雰囲気に反映されているのではないでしょうか。
不動産・住宅のCMに出演している女性タレント
(三井不動産)
広瀬すず
1998年6月19日生まれ、静岡県出身の27歳。2013年に俳優デビューして、2015年に早くも『学校のカイダン』(日テレ系)で連ドラ初主演。2019年にはNHK連続テレビ小説『なつぞら』でヒロインを演じました。2026年秋に横浜流星とW主演している映画『汝、星のごとく』が公開される予定です。
数多くのCMに起用されてきた人気女優ですが、総合不動産デベロッパー「三井不動産」のCMには2021年から出演。2022年からは「三井のすずちゃん」と題したシリーズCMで、友人役とともに同社が展開する街作りや施設を紹介。11月度調査で20代女優3位。認知度では女優全体で1位。イメージワード調査では「ビジュアルがよい」「かわいい」に次いで、「演技力がある」「親しみやすい」のスコアが高くなっています。親しみやすい演技派というイメージが、「国民的に愛される主人公」をテーマとした朝ドラ風のCMの内容にリンクしています。
(大和ハウス工業)
吉高由里子
1988年7月22日生まれ、東京都出身の37歳。2006年に俳優デビュー。2014年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインを演じて注目を集めました。2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』で主演。
池松壮亮と共演する「大和ハウス工業」の企業CMシリーズ「こっちの世界」が2025年9月からスタート。11月度調査では30代女優7位。年代別でスコアが特に高いのは30代前半と40代後半以上で、中高年層でも支持が高いことがハウスメーカーのターゲット層に合っています。イメージワード調査では「演技力がある」「個性的な」「親しみやすい」のスコアが高く、ミステリアスなドラマ仕立てCMへの起用要因になったと考えられます。
(三菱地所)
高畑充希
1991年12月14日生まれ、大阪府出身の34歳。2007年~2012年にブロードウェイミュージカル『ピーターパン』で主演。2016年にNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』でヒロイン役。最近では2025年10月に公開された映画『秒速5センチメートル』でヒロインを演じました。
総合不動産デベロッパー「三菱地所」の企業CMシリーズ「三菱地所と次に行こう」に2018年から出演。2025年8月に放映開始された最新CM「東京駅前丸の内篇」「プレミアム・アウトレット篇」ではクイズ形式の歌をフューチャーして、歌唱力に定評がある高畑充希の魅力を活かしています。イメージワード調査ではもっともスコアが高いのが「演技力がある」で、次いで「親しみやすい」が高くなっています。この2つのワードは三井不動産のCMに出演する広瀬すずも高い数値を示しており、デベロッパーのCMに起用されるタレントのポイントと言えます。
(東急不動産)
二階堂ふみ
1994年9月21日生まれ、沖縄県出身の31歳。2007年に俳優デビュー。2012年に公開された映画『ヒミズ』で脚光を浴び、2020年には窪田正孝が主演したNHK連続テレビ小説『エール』でヒロインを演じました。2025年10月期は神木隆之介も出演したドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジ系)に出演。
三井不動産・三菱地所に次いで業界3位の総合不動産デベロッパー「東急不動産」のCMに2023年から出演。毎回主に環境先進をテーマにした企業CMで、環境問題に関心が高い二階堂が起用されました。イメージワード調査では「演技力がある」「個性的な」のスコアが高く、個性派女優のイメージがメッセージ性が強いCM内容につながってるのではないでしょうか。
(阪急阪神不動産)
今田美桜
1997年3月5日生まれ、福岡県出身。地元・福岡でのモデル活動を経て、2016年に上京。連ドラやCMで人気を集め、2025年前期NHK連続テレビ小説『あんぱん』でヒロインを演じました。2025年12月24日に公開された福山雅治主演の映画『ラストマン-FIRST LOVE-』でヒロインを演じています。
日本モニター調べの「2025タレントCM起用社数ランキング」で4位(15社)。
大阪に本社がある総合不動産会社「阪急阪神不動産」が2025年1月から「ひと、つながりの街へ。」をキャッチフレーズにスタートさせた企業CMに出演中。11月度調査では女優全体で6位、20代女優2位にランクイン(1位は芦田愛菜)。イメージワード調査では「ビジュアルが良い」「かわいい」「演技力がある」「親しみやすい」のほか、「活発な」のスコアが高く、CMでもアクティブな表情を見せています。CMが撮影されたJR大阪駅前の複合施設「グラングリーン大阪」に、“聖地巡礼”するファンの姿も見られるようです。認知度・タレントパワーが上昇中の今田美桜をCMに起用することで、知名度の拡大にも繋がりそうです。
まとめ
不動産・住宅メーカーのCMには、幅広い年代での知名度と信頼・安定感が求められるため、NHK朝ドラで主演した俳優(神木隆之介、広瀬すず、吉高由里子、高畑充希、今田美桜など)の起用が目立っています。また、不動産会社や住宅メーカーのCMには、戸建て住宅のターゲットとなる視聴者層に支持されている40代~60代の男優が起用されています。
最近の住宅メーカーのCMは、若い世代をターゲットにした20代~30代の男女俳優の組み合わせによるシリーズがトレンドになっています。紹介した大和ハウス工業の吉高由里子・池松壮亮のほか、積水ハウスの企業CM「帰ろう。」篇には鈴鹿央士と古川琴音が出演。2025年12月20日からオンエアされている三井不動産レジデンシャルのCMでは、杉野遥亮と志田彩良が夫婦役を演じています。
不動産デベロッパーのCMには、幅広い年齢層でパワースコアが高く、イメージワード調査で「演技力がある」「親しみやすい」の数値が高い20代~30代の女優が起用される傾向が見られます。
☆タレントパワーランキングを活用して、キャスティングにぴったりなタレントを見つけてみませんか?
毎回1280名のタレントについて調査しているタレントパワーランキングのデータを精査すれば、「いま、不動産・住宅メーカーのCMに起用すると効果的なタレントは誰なのか」が見えてくるはずです。
タレントパワーランキングでは、不動産・住宅メーカーのCMに出演しているタレントの年代別認知度やタレントパワーを知ることができるほか、既にCMに出演しているタレントに世間でのイメージが似ている相似タレントをコンピュータがはじき出す機能もあります。
文/高倉文紀
評論家。マーケティングを専攻していた大学在学中にフリーの雑誌ライターとして活動開始。『インビテーション』『日経エンタテインメント!』などの雑誌でCM出演タレントに関する連載を手がけたほか、時事通信社が発行していた『時事年鑑』で「広告業界の1年」の項目の執筆を担当。現在は『日刊ゲンダイ』などの新聞・雑誌・ウェブサイトで俳優・アイドルの取材やタレント市場分析を展開している。



