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タレントパワーランキングのデータで検証! 「NHK朝ドラヒロイン」は本当に知名度が急上昇するのか?~過去10年のヒロインの「朝ドラ出演後認知度上昇率」TOP10

過去10年ヒロインの「朝ドラ出演後認知度上昇率」TOP10の算出方法

タレントパワー上昇率ランキングは、株式会社アーキテクトが実施している業界最大規模のタレント調査『タレントパワーランキング』の調査結果からパワースコアを算出して作成しました。

パワースコアとは、10~60代男女の回答結果をもとに、タレントの認知度(顔と名前を知っている)と誘引率(見たい・聴きたい・知りたい)を掛け合わせた値です。

今回は2023年11月度に調査したデータにおいて、2014年以前のNHK連続テレビ小説でヒロインを演じた女優の朝ドラ放送前直近(4月スタートの前期作品は2月度、10月スタートの後期作品は8月度調査)と朝ドラ終了直後(前期作品は11月度、後期作品は放送開始翌年の5月度)の男女全年齢における認知度を比較して、スコアが大きく上昇した順にランキングをまとめました。

※シャーロット・ケイト・フォックスの「放送前」は初めて調査対象になった2014年11月度
高畑充希の「放送前」は2015年11月度
趣里の「放送後」は2023年11月度(最新)

なお、朝ドラにおいては女性主人公と男性主人公の場合の相手役を「ヒロイン」と呼びます。男性が主演した作品は、ヒロイン(相手役)を対象としました。また、2021年後期の『カムカムエヴリバディ』は3人ヒロイン制でしたが、そのうち、深津絵里は放送期間中の調査データがないため、除外しています。

表1では2014年以降に放送された朝ドラとそのヒロインを時系列にまとめました。

表1

放送年度 通算作品番号 作品名 最高視聴率 ヒロイン
2014前 90 花子とアン 25.9 吉高由里子
2014後 91 マッサン※ 25.0 シャーロット・ケイト・フォックス
2015前 92 まれ 22.7 土屋太鳳
2015後 93 あさが来た 27.2 波瑠
2016前 94 とと姉ちゃん 25.9 高畑充希
2016後 95 べっぴんさん 22.5 芳根京子
2017前 96 ひよっこ 24.4 有村架純
2017後 97 わろてんか 22.5 葵わかな
2018前 98 半分、青い。 24.5 永野芽郁
2018後 99 まんぷく 23.8 安藤サクラ
2019前 100 なつぞら 23.8 広瀬すず
2019後 101 スカーレット 22.4 戸田恵梨香
2020前 102 エール※ 22.1 二階堂ふみ
2020後 103 おちょやん 18.9 杉咲花
2021前 104 おかえりモネ 19.2 清原果耶
2021後 105 カムカムエヴリバディ 19.7 上白石萌音
2021後 105 カムカムエヴリバディ 19.7 深津絵里
2021後 105 カムカムエヴリバディ 19.7 川栄李奈
2022前 106 ちむどんどん 17.6 黒島結菜
2022後 107 舞いあがれ! 16.9 福原遥
2023前 108 らんまん※ 19.2 浜辺美波
2023後 109 ブギウギ 17.3 趣里

2014年以降の朝ドラ一覧

最高視聴率はビデオリサーチ調べより(関東地区・世帯・リアルタイム)。
※の作品は男性主演。

『ブギウギ』の最高視聴率は2024年2月7日現在

『ブギウギ』の趣里もTOP10入り

第10位 黒島結菜 くろしま ゆいな

10位は2022年放送の『ちむどんどん』でヒロインを演じた黒島結菜です。沖縄県が本土復帰して50周年を記念して制作された作品で、料理人を目指す主人公を演じました。ヒロインの姉役を川口春奈、妹を上白石萌歌が演じたほか、仲間由紀恵、竜星涼、宮沢氷魚、山田裕貴、井之脇海、高田夏帆らが出演しました。

黒島結菜は1997年3月15日生まれ、沖縄県出身。2012年に芸能活動をスタートして、2016年放送の『時をかける少女』(日テレ系)で連ドラ初主演。朝ドラ『マッサン』『スカーレット』にも出演したほか、NHKドラマでは2017年の『アシガール』で主演して注目を集めました。朝ドラ出演前の認知度は35.0%でしたが、『ちむどんどん』主演によって幅広い層に知られるようになって、47.3%まで上昇しました。

2024年1月に、『ちむどんどん』で共演した宮沢氷魚と交際中で(入籍の予定なし)、第1子を妊娠したことを発表しました。

第9位 趣里 しゅり

9位は2023年10月にスタートして現在放送中の『ブギウギ』で主演している趣里がランクインしました。「ブギの女王」として戦後の音楽界で活躍した笠置シヅ子をモデルとする主人公を演じています。共演は水上恒司、伊原六花、富田望生、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか。なお、彼女に関しては朝ドラ終了後の認知度が未確定のため、最新データと比較した暫定順位となります。

オーディションで本作のヒロインに選ばれた趣里は1990年9月21日生まれ、東京都出身。2011年に『3年B組金八先生ファイナル』(TBS系)で俳優デビュー。2013年には主演映画『生きているだけで、愛』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、演技派として活躍。映画での活躍が多かったことから朝ドラ出演前の認知度は31.5%でしたが、最新の2023年11月度調査では44.3%まで上昇しています。

2024年2月1日に「第97回キネマ旬報ベスト・テン」が発表され、2023年11月に公開された映画『ほかげ』で主演女優賞を受賞しました。

第8位 永野芽郁 ながの めい

2018年の『半分、青い』で主演した永野芽郁が8位にランクインしました。『ロングバケーション』(フジ系)などで知られる北川悦吏子が脚本を手がけた作品で、岐阜と東京を舞台に病気で左耳の聴力を失った主人公が漫画家を経て発明で活躍するまでを描きました。松雪泰子、佐藤健、間宮祥太朗、中村倫也、清野菜名、志尊淳、奈緒、豊川悦司らも出演。

オーディションでヒロインに選ばれた永野芽郁は1999年9月24日生まれ、東京都出身。小学生のときにスカウトされて、芸能界入り。朝ドラは『半分、青い。』が初出演でしたが、NHK大河ドラマには2013年の『八重の桜』と2016年の『真田丸』に出演していました。朝ドラ出演前の認知度は35.5%でしたが、放送終了後には50.5%まで上昇。朝ドラ以降も連ドラで主演を重ね、最新(2023年11月)の認知度は67.9%までアップしています。

現在、2014年1月クールの月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジ系)で主演中。5月公開の映画『からかい上手の高木さん』でも主演します。

映画『地獄の花園』主演・永野芽郁がこれからチャレンジしてみたいことは旬の女優インタビュー 永野芽郁・後篇 5月21日に主演映画『地獄の花園』が公開される永野芽郁。10月には映画『そして、バトンは渡さ...
第7位 芳根京子 よしね きょうこ

2016~2017年放送の『べっぴんさん』で主演した芳根京子が7位。戦後、同級生らとともにベビー用品店を起業する主人公を演じました。共演は生瀬勝久、菅野美穂、谷村美月、百田夏菜子、土村芳、高良健吾、大西礼芳、久保田紗友ほか。

オーディションでヒロインに選ばれた芳根京子は、1997年2月28日生まれ、東京都出身。2013年に俳優デビュー。2014年の朝ドラ『花子とアン』では仲間由紀恵の娘役。2015年に『表参道高校合唱部』(TBS系)で抜擢されて連ドラ初主演を果たしました。当時19歳でのフレッシュな朝ドラ起用で主演前の認知度は12.8%でしたが、放送終了後には31.4%まで上昇しました。

2024年3月に放送予定のドラマ『テレビ報道記者 ~ニュースをつないだ女たち~』(日テレ系)で江口のり子とW主演しました。

第6位 安藤サクラ あんどう さくら

6位は2018~2019年放送の『まんぷく』で主演した安藤サクラ。インスタントラーメンを生み出した日清食品の創業者・安藤百福の妻・仁子をモデルとする主人公を演じました。共演は長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、桐谷健太、菅田将暉、松坂慶子ほか。ナレーションは芦田愛菜が担当しました。

安藤サクラは1986年2月18日生まれ、東京都出身。2007年に実父・奥田瑛二が監督を手がけた映画『風の外側』で主演デビュー。2011年放送のNHK朝ドラ『おひさま』に出演。2018年6月に公開された映画『万引き家族』で主演して、国内外の映画祭で高く評価されました。朝ドラ主演前の認知度は42.7%で、放送終了後には64.0%まで上昇しました。

最近では2023年11月に公開された映画『ゴジラ-1.0』に出演。朝ドラ『らんまん』ヒロインの浜辺美波と共演しました。

第5位 高畑充希 たかはた みつき

5位は2016年の『とと姉ちゃん』で主演した高畑充希です。結核で亡くなった父に代わって母や妹たちを守り、終戦後に女性のための生活雑誌を発行する出版社を起こす主人公を演じました。共演は木村多江、相楽樹、杉咲花、川栄李奈、趣里、西島秀俊ほか。本作で助演した杉咲花、川栄李奈、趣里は、その後、朝ドラでヒロインを演じます。

オーディションでヒロインに選ばれた高畑充希は1991年12月14日生まれ、大阪府出身。2007年から2012年までミュージカル『ピーターパン』で主演。2013年には杏主演の朝ドラ『ごちそうさん』に出演しました。それまでは舞台やドラマの脇役での活躍が多く、朝ドラが連ドラ初主演だったこともあって放送開始6か月前の2015年11月の認知度は48.7%でしたが、放送終了後には70.6%まで大きく上昇しました。

2024年1月に公開された映画『ゴールデンカムイ』にも出演しています。

第4位 シャーロット・ケイト・フォックス

4位は玉山鉄二が主演した2014~2015年放送の『マッサン』でヒロインを演じたシャーロット・ケイト・フォックス。ウイスキー作りに情熱を燃やす主人公と結婚したスコットランド出身の女性を演じました。共演は相武紗季、早見あかり、木南晴夏、江口のり子、黒島結菜、堤真一ほか。

オーディションで初の外国人ヒロインに選ばれたシャーロット・ケイト・フォックスは1985年8月14日生まれ、アメリカ合衆国出身。米国で女優として活動していましたが、本作のヒロインオーディションの募集を知り、応募。朝ドラに出演するまではほとんど無名で放送開始直後の認知度は10.3%でしたが、放送開始後には34.7%までアップ。

朝ドラ以降は日本で女優として活動。2019年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』にも出演しました。

第3位 葵わかな あおい わかな

3位は2017~2018年の『わろてんか』で主演した葵わかな。吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした、興行師として活躍する主人公を演じました。松坂桃李、濱田岳、千葉雄大、広瀬アリス、成田凌らも出演。

オーディションでヒロインに選ばれた葵わかなは1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。2009年にファミリーマート「霧島の天然水」のCMでデビュー。2012年から2014年までアイドルユニット「乙女新党」のメンバーとしても活動しました。

連ドラ主演は朝ドラ前年の『女優堕ち』(BS朝日)などBSやローカル局のドラマでは経験していましたが、放送前の認知度は11.3%でした。朝ドラでの活躍で広い世代に浸透して、放送終了後には39.5%まで上昇しました。

2023年は1月期のドラマ『三千円の使い方』(東海/フジ系)で主演しました。

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第2位 波瑠 はる

2位は2015~2016年の『あさが来た』で主演した波瑠です。実業家・教育家として社会に貢献する主人公を演じました。高い支持を集めて、今世紀に入ってからの朝ドラでは最高記録となる平均視聴率23.5%、最高視聴率27.2%(ビデオリサーチ調べ・関東・世帯視聴率)をマークしています。柄本佑、ディーン・フジオカ、小芝風花、清原果耶、工藤阿須加、吉岡里帆、瀬戸康史など、助演陣も個性的な顔ぶれが揃っていました。

波瑠は1991年6月17日生まれ、東京都出身。ドラマのヒットによって、朝ドラオーディション4回目の挑戦でヒロインに選ばれた波瑠の認知度も、放送前の35.6%から放送終了後には64.6%まで大きく上昇しました。朝ドラ出演によって大ブレイクした印象が強い女優のひとりです。

現在も主演級女優として活躍中。2024年1月クールは『グレイトギフト』(テレ朝系)でヒロインを演じました。

1位は2015年放送朝ドラのヒロイン

第1位 土屋太鳳 つちや たお

1位は2015年の『まれ』で主演した土屋太鳳です。能登に移住して子供時代を過ごしパティシエを目指す主人公を演じました。能登の塩田職人一家の長女を恒松祐里、次女を浜辺美波が演じていました。ほかに大泉洋、常盤貴子、山﨑賢人、門脇麦、飯豊まりえ、柳楽優弥らも出演。

オーディションでヒロインに選ばれた土屋太鳳は1995年2月3日生まれ、東京都出身。2005年に「スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス」で審査員特別賞に輝き、芸能界入り。NHK朝ドラ初出演は2011年の『おひさま』。2014年の朝ドラ『花子とアン』では吉高由里子の妹役を演じました。『まれ』放送前の認知度は2014年以降の朝ドラヒロインでは2番目に低い14.3%でしたが、放送終了後には51.6%まで上昇しました。

2023年1月にGENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太との結婚を発表。8月に第1子を出産しました。2024年2月23日から主演映画『マッチング』が公開中です。

 

上昇率TOP10は下表の通りです。

表2

順位 タレント名 差分(スコア) 放送年度 作品名
1位 土屋太鳳 37.3 2015前 まれ
2位 波瑠 29.0 2015後 あさが来た
3位 葵わかな 28.2 2017後 わろてんか
4位 シャーロット・ケイト・フォックス※ 24.4 2014後 マッサン
5位 高畑充希 21.9 2016前 とと姉ちゃん
6位 安藤サクラ 21.3 2018後 まんぷく
7位 芳根京子 18.4 2016後 べっぴんさん
8位 永野芽郁 15.0 2018前 半分、青い。
9位 趣里 12.8 2023後 ブギウギ
10位 黒島結菜 12.3 2022前 ちむどんどん

まとめと分析

TOP10の女優がヒロインを演じた作品のうち、2020年以降に放送されたのは9位の趣里と10位の黒島結菜だけで、8位まではすべて2018年以前に放送された朝ドラのヒロインでした。安藤サクラと黒島結菜以外の8名はオーディションで選ばれました。

これに対して11位以下では、11人中9人が2019年以降に放送された朝ドラでヒロインを演じた女優となっています。2019年以降のヒロインは放送前の認知度が85.1%だった広瀬すずをはじめ、戸田恵梨香(同76.6%)、二階堂ふみ(67.5%)、上白石萌音(69.8%)など既に多くの人に知られていた女優が増えました。したがって、朝ドラの放送期間を経ても認知度があまり上昇しないケースが多くなっています。

また、最高視聴率との関係を見ると、8位までの女優がヒロインを演じた朝ドラは、いずれも20%以上をマークしていました。2014~2016年には最高視聴率25%以上を記録した朝ドラも4作生まれており(『花子とアン』『マッサン』『あさが来た』『とと姉ちゃん』)、このうち、既に認知度が高かった吉高由里子が主演した『花子とアン』を除く3作のヒロインが認知度上昇率TOP5にランクインしています。

表3:今後の朝ドラヒロイン

通算作品番号 作品名 放送年度 ヒロイン
110 虎に翼 2024前 伊藤沙莉
111 おむすび 2024後 橋本環奈
112 あんぱん 2025前 今田美桜

 

2024年後期は伊藤沙莉、2025年は橋本環奈、今田美桜が朝ドラのヒロインを演じます(表3)。3人とも連ドラの主演女優として活躍中でCM出演も多く、2023年11月度調査現在の認知度は、伊藤沙莉が57.4%、橋本環奈が82.3%、今田美桜は69.8%となっています。過去の傾向から考えると、認知度が6割未満の伊藤沙莉は朝ドラ終了後の「朝ドラ効果」が十分期待されるので、CM起用のバリューがありそうです。橋本環奈、今田美桜も、さらに幅広い層に支持が広がるチャンスとして朝ドラでの活躍が注目されます。

文/高倉文紀

評論家。『日経エンタテインメント!』『日刊ゲンダイ』などのメディアで女優・女性アイドル・男性俳優の取材や分析を展開。
https://note.com/tokyodiorama

 

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